よくある質問

後見に関する質問にお答えします

「成年後見」の申立は、どんな場合に必要?
認知症などによって、ご本人の記憶力、判断力が大幅に低下した場合には、ご自身で入院や介護サービスの手続ができなくなります。また、銀行でのお金の出し入れが困難となり、ご自身の年金手続や保険金請求などが一層難しい状況も生まれます。さらに、ご家族の間などで、判断力の低下した方を含めた財産の分割・相続を行なおうとする場合には、ご本人の利益を代弁する後見人がいなければ、正規の手続を進めることができません。
福祉・医療関係者や金融機関などから「後見手続」を勧められた場合には、なるべく早くご本人の主治医の先生などに相談した上、後見の手続を進める必要があります。
「後見」の手続は、誰が、どこでするの?
「法定後見」の申立は、ご本人の家族や四親等内の親族が、ご本人が実際に居住する地域にある家庭裁判所で手続を行ないます。ご本人自身が申立をすることも可能で、また、申立を行なってくれる家族・親族が誰もいない場合には、市町村長などが申立手続をします。
「任意後見」の契約は最寄りの公証役場で行ないますが、その後の「任意後見監督人選任」の申立手続は、ご本人の住居地の家裁で行ないます。
後見人にはどんな資格が必要?
後見人になるための特別な資格は不要です。普通の市民生活を送っている成人であれば誰でも後見人の候補者になることができます。実際に、後見人の多くはご家族や親族がなっています。ただし、法定後見の場合には、後見人の選任は家庭裁判所が行ないますので、希望どおりにはならないこともあります。
後見人の資格をあえて挙げるとすれば、「ある程度の人生経験」「普通の市民としての常識」「常識的な金銭管理意識」「人を思いやる心」を持っていることかもしれません。
後見人の仕事の範囲はどこまで?
後見人は、ご本人の心身の健康や安全、生活の状態をしっかり見守り、医療や介護など必要なサービスや契約などを選択し、手続を代行する仕事などをします。また、ご本人の権利や財産を守り、不利益な契約の取消しなども行ないます。ご本人のための「買い物や食事の世話」「掃除」「身体の介助」などは含まれません。
「やはり、専門知識がないと後見人は務まらない?」と、心配する必要はありません。分からないことは当センター、家庭裁判所にご相談ください。また、複雑な問題は、後見人の立場で弁護士や税理士などの専門家に解決を依頼することができます。
後見人は身元保証人になってもらえる?
判断力の低下した方について、病院や施設から身元保証人を立てて欲しいと求められることがありますが、原則として後見人は保証人を引き受けることができません。保証人は、ご本人の費用負担が困難となった場合の支払責任や、ご本人が亡くなった時の引き取り責任などの履行が求められますが、本来、ご本人が支払うべき負債を後見人が背負い込むことは一切ありませんし、ご本人死亡後の責任を負うこともありません。
だだし、病院・施設側が成年後見人の立場を理解し、「後見人の責務の範囲内で良い」ということであれば引受けできる場合もあります。
後見人の仕事はいつまで続く?
「判断力を失くした父親の不動産を処分する」ために家裁に申立手続をして、息子が後見人に選任されて「無事に売却が終わった・・・」としても、そこで「後見人の仕事は終わり」ではなく、むしろそこからが始まりで、後見人の仕事と責任はご本人がお亡くなりになるまで続きます。
「病気のために後見人の仕事を続けられない」など、正当な理由がある場合は、家庭裁判所の許可を受けて後見人を辞めることができます。しかし、後見人を引受けるときには、「後見人は長期間にわたって大きな責務を負う」ことを良く理解しておくことが大切です。
※後見人を辞める場合には、家庭裁判所の許可が必要で勝手に辞めることは許されません。
ご本人が亡くなった後のことはどうなる?
後見人の責務は、ご本人がお亡くなりになったときに終了します。その場合、後見人は管理してきたご本人の財産を整理した後に、家庭裁判所や後見監督人に最終の報告書を提出し、残った財産や重要書類などを相続人に引き渡さなければなりません。葬儀や法要の手配、相続財産の処分などを、後見人が勝手に行なうことは許されません。
「死後のことも後見人に一切任せたい」という場合は、任意後見契約を結び、同時に「死後の事務を委任する」契約を結びます。また、遺言の形でその意思を伝えることもできます。手続は公証人・弁護士・司法書士などの専門家に相談します。(拡張型任意後見契約 参照)
後見人は遺言書の作成を手伝ってくれるの?
遺言書は判断力が大幅に低下した後では作れませんので、公証役場で任意後見契約を結ぶ際に、ご本人の自由意思で公正証書遺言を同時に作成して、死後のことについて意思を明確にしておくことは大切なことです。
遺言の作成は、ご本人だけができることで、後見人は遺言書の作成には関わることができません。判断力の低下したご本人の財産を管理する立場の後見人は、遺言の内容に影響を及ぼす恐れもあり、意図的に、後見人自身を遺産の受取人とする遺言の作成に導くことも起こり得るためです。遺言書の内容について後見人が関与することは、倫理的にも許されません。
それで結局、誰を後見人にすれば・・・?
ご家族、親族の中で「しっかりした人、信頼できる人」がおられれば、その方に後見人を依頼するのが一番でしょう。その場合は、そのことがご家族のもめ事の原因とならないよう、事前に良く話し合いを持つことが大切です。
身内に適当な後見人候補者・受任者がいない場合には、NPO法人、社会福祉士、司法書士、弁護士などの第三者に依頼することになりますが、「この人なら絶対に信頼できる」という個人や法人を見極めて慎重に選択することが大切です。複数の後見人をつけることもできます。家族後見人と外部の専門家が共同で後見人となるのも解決策の一つです。
※家裁は、家族・親族の後見人などに後見監督人を付けることがあります。